「兜」-2           

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前号からの続き

(6)病害虫
兜の病気は先にも述べた「赤腐れ病」があります。これは菌によるものでは無く、私は生理的要因と考えています。低温と日照不足、多湿が重なれば必ず発生します。兜の根はデリケートと言われる所がここに有ります。
一般的な菌による病気に対しては非常に強いものですので、殺菌剤はあまり必要ありません。
害虫については、浸透移行性殺虫剤「ダイシストン粒剤」が非常に有効です。これを使用してから我が家では、ワタムシ、カイガラムシ、ネジラミ、ハダニなど一切居なくなりました。使用法はいたって簡単で5〜8月の生長期に2回ほど、鉢の上へ少量(4号鉢でひとつまみ)置くだけでOKです。後は、潅水の度に殺虫成分が根から吸収されていきま、1ヶ月位薬効が続きます。注意することは、結構きつい農薬ですので絶対に素手で触らず、施した3日位は温室に入らない方が賢明です。又、実生1年未満の幼苗これに触れると枯れますので使用しないで下さい。植え替え時、用土に混ぜているそうですが、農薬特有の刺激臭もあって、とても我慢の出来るものでは有りませんし、根が出ていなければ効果はありません。やはり、根が張ってから使用するのが効果的です。
購入(要印鑑)は農協がお徳で、3kg袋が千円位です。

4、実生
3拍子揃った理想の兜を求めて多くのマニアが実生を繰り返しています。しかし、その確立は非常に低く、1果(約200粒)に1本くらい、なかには千本に1本と言う方もいます。そして銘品ともなれば1万本に1本とか。気が遠くなりますがともかく楽しいのがこの実生です。
実生方法はこれだけで多くのページが必要ですので別稿とさせて戴くことにして、兜の場合は大変容易で、交配してから結実までに3週間。採取して直撒けば100%発芽し、うまく行けば3年で5cmの大きさとなり開花を見て、選抜できます。
採取は5〜6月の生長期。1花/株/年が理想です。遺伝性が強いのは父木の方とある兜名人が教えてくれましたがどうでしょうか?
兜で誇れることが1つ有ります。それは「兜は純系種」ということ。兜を母木とする交配種は有りません。他種の花粉は一切受け付けないのです。大鳳兜(前母木、後父木)は有っても兜大鳳は有りません。これも魅力の1つではないでしょうか。

5、白く作るには
これが目下の悩みです。未だにこうすればというものが見つかりません。純白の苗を入手してもすぐに黒く汚れてしまいます。
今から9年くらい前になりますが、福島の某業者さんに言われたことが有ります。「名古屋近辺じゃ白く出来ないすよ。ほらっ、熱帯夜が1ヶ月も続くでしょ。関東では1日〜2日ですっから。」
白い兜というとどうしてもルーツの北関東との比較に成ってしまいます。確かに夏は乾燥気味で涼しく、驚くことに冬はこの辺りより暖かいのです。
また、関西の大名人が緯度によるルックスの違いを指摘していましたが成る程、関東の陽光はこちらに比べて弱いというか穏やかです。
気象条件が全てだとは意地でも言いたくは無いのですが遺憾ともし難い地域差は認めざるを得ません。
このように高温多湿と強光線が関東と同じ作りをしていても白く出来ない要因でしょう。特に湿度が多分に影響していると思われます。ではどうすれば良いか?
@棚にして、棚の上は湿度を保つものは置かない。
A床をコンクリート等で張り、湿気が上がるのを防ぐ。
B水遣りは晴天の日の朝早く。
C遮光によって光線を穏やかなものにコントロールする。
D夏は通風に努める。
以上の5点をクリアー出来れば相当白く成るのではと思われます。私自身、まだ試行錯誤の連続ですが、順次実行して行きますのでその頃これだと言う物をご報告出来るかもしれません。さらに潅水方法について、頭からがよいか、根本からが良いかの問題が有りますが、各地の名人はみな頭から潅水していますので、あまり気にする必要は無さそうです。また、最近、水道水を晴天の日の朝早く、疣、白点が十分濡れるほど潅水するのがポイントと関西の方に聞きましたがどうでしょうか?。

6、各地の有名兜について
最近のカタログには苗字を冠した兜が多数並んでいます。しかし、これは作出者の一連の実生苗のことでこれらが皆、その方の持っている銘品と同様に成る事はまず有りません。
非常に紛らわしいのですが、逆に冠が無いと売れないため、業者さんにとっては痛し痒しといったところです。購入する場合はこの点を注意し、兜の顔を見てからとするのが賢明です。

7、あとがき
ひとつの植物を、ひとつの種を突き詰めるほど、その奥の深さを感じます。実生から完成球までの長い期間、一つの失敗も許されない厳しい世界でもあります。それだけに手塩にかけた植物が報いてくれた時の喜びは無上のものに成るでしょう。
数年前、京都シャボテン大会で上位入賞した兜が有ります。径は14cmで真っ白。とある兜名人の作ですが、聞けば実生8年とのこと。兜の性質を知り尽くした故なればこその成果でしょう。
兜に限らずサボテンをうまく育てるには、まず自生地の環境を知り、成長期を掴み、温室の条件、用土等を工夫すれば自ずと成績は上がる事でしょう。昔の教科書から脱却する事も必要と思われます。
さてこの駄文、私自身の経験と、名人達が以前書き綴った栽培法や聞きかじったものを参考にまとめてみました。書くのと読むのは大違いで、今、書くことの難しさを痛感しています。言葉足らずの面も、また、異論も多々有ろうかと思いますが、ひとつの参考としてご理解戴ければ幸いです。



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